こどもトランプ1to10

関東学院大学建築・環境学部
中和 渚

 私は最近、ドイツの早期数学支援について研究しています。幼児期の算数・数学に関わるものは巷に溢れていて、保護者の皆さんはどれが良いものでどれがそうでないものか、判断がつきにくいのではないでしょうか。そこで、ここで、ドイツの早期数学支援プログラムで大切にされているものについて紹介します。

この早期数学支援プログラムは、数学教育学者であるビットマン博士を中心として始まったプロジェクトの一つに位置付けられています。ビットマン博士は、幼児期では「遊び」を大切にして教育を行うことが大切だと考えており、発行されたテキストではたくさんのゲームや遊びが紹介されています。

そのテキストには数量を「パッと一目見てわかるようになる」ことを狙った練習があります。この力は「サビタイジング能力」と言われるものです。人間は数量を数えることで、具体物がいくつあるのか知ることができますが、2,3個のものであれば、数えなくとも幾つあるのか認識できると思います。それを応用したものが、概念的サビタイジングと言われるものです。例えば、以下に示す5個の丸が書かれたカードをみて、1つずつ数えるのか、あるいは3つの塊と2つの塊があり、合わせると5つ、というように瞬時に数を組み合わせて捉えているのか、この両者には数量の捉え方に質的な違いがあります。

サビタイジング能力(特に概念的サビタイジング)を身につけることで、1つずつ数えるよりも数量を効率的に捉えられるようになり、小学校入学後に学ぶ計算の段階になっても、その能力が発揮されると言われています。ビットマン博士の本には、子どもたちがパッとみて数を答えるような遊びがたくさんあります。例えば、以下のような遊びがあります。

材料:1-6個の丸が書いてあるカード
ルール:神経衰弱と同じでカードを裏返しにして、2枚引く。カードに示された数が同じであれば、それをもらい、違えば戻す。二人ずつあるいはグループで別れて行って良い。最後はより多くのカードを手に入れた方が勝ちとなる。
カードの作成の際のポイント:下に示すように、6であれば2と4、3と3、1と2と3のように、色々な組み合わせで数量を捉えられるよう、丸の配置を変えます。また、丸だと幼児にとっては面白くないので、子どもが好きなキャラクターや果物、食べ物、動物などでも良いと思います。ドイツの場合は様々な虫が丸の代わりに使われていました。

(使用するカードの例)

これは一つの例ですが、まだまだ面白いゲームあります。ドイツ語ですが興味がある方は購入してみてください。書店で取り寄せ購入が可能です。

上記に紹介したゲームも色々なアレンジが可能です。使う数を増やす(1-10位までで、充分だと思います)、配列のバラエティーを増やす、用いるカードを沢山用意する、などできます。他にも面白い使い方があるのですが、それはまたの機会にご紹介します。

最後に、もちろん「数える」という行為は、子どもたちにとってそれ自体に価値があります。3-4歳児には積極的に数えることを楽しんでもらいたいと思っています。ただし、小学校就学前は、数えることからサビタイジングへの移行も考慮すべきだと考えています。