ヨコハマSASユニバーサルデザイン研究室
鈴木 佐知子
かつて私が横浜国立大学大学院に籍を置いていたときに作成したジュニア向けの環境デザイン教育の研究誌から、新たにチャイルド向けの学びの内容と方法を考案します。幼・小児の発達段階をふまえた教材を、今後このコラムで紹介します。なお、アートの体験や製作も料理のレシピになぞらえて以後「アートレシピ」と言います。お子様たちが環境や空間にどのように反応するか楽しみです。
No.3 テーマ ヒューマンスケール (身体尺)
お子様の身近にある色々な物の大きさや長さを、自分の体の一部を使って測ってみましょう。遊びを通して、物の形や大きさに興味を覚え、お子様の空間認知能力を引き出します。
「ヒューマンスケール身体尺」の説明
日本でも古くから伝わる物の測り方のことです。人の体の部分(手や指)や歩幅で、おおよその大きさや長さを測る方法を言います。海外でも同様な方法を使用していたようです。
Ⅰ. 事前準備:材料や道具の用意、安全の確認
対象年齢:5歳~小学校低学年
1.メジャー、定規、ボールペン、ノート記録帳
2.環境作り、環境下見
室内外に計測しやすい物を配置したり、確認したりします。(机やノートなど、また、ドアや窓・植木鉢など)、さらに、危険を防ぎ、素材の安全も確かめます。
Ⅱ. 実践:計測
1.はじめに測かるものを用意します。例えば、お子様が普段使っているおもちゃ箱や 絵本お絵描き帳などの、身近な用具がよいでしょう。(環境を整備)5分
2.身体尺で大きさや長さを測ることを説明します。
まず、身体尺で測るときの基本の形をお子様に伝えます。
手でグーチョキパーの形をしめし、お子様にもためしてもらいます。
A.「パー」の形をしめし。「手のひらを、このようにいっぱいに広げてみましょう。親指と小指までの長さを測ってみましょう。○○㎝と記録します。
B.次に「チョキ」「ピース」の形をしめし、「手をチョキの形にして、ひとさし指となか指の間の長さを測ってみましょう。」○○㎝と記録します。
C.、もう一つの「チョキ」「ピストル」の形をしめして、「手をチョキの形にして、親指とひとさし指の間の長さを測ってみましょう。」○○㎝と記録します。
【何を測るのか】机の天板、ノートや本など身近な用具
【どのように測るのか】A~Cの指と指の間の長さを基準にして、身近な物の長さを測ります。
【何のために測るのか】定規がなくても、物の大体の大きさがわかる方法を知り、生活に活かします。(説明)5分
3.まず屋内から始めましょう。、お子様が日常使用している机や本などから計測しましょう。色々な指を使って測ります。どの指を使って測るのか考えましょう。○○㎝と記録します。
4.次に、屋外に出ます。お子様が普段から遊んでいる場所で、窓やドアなど測ってみましょう。お庭や校庭へは歩幅をつかい歩数を測りましょう。○○㎝○○mなど、記録します。掛け算の難しい人は、先生やお家の人に手伝ってもらいます。(屋内外事物の計測)20分
5.声かけをしましょう。「色々な物が測れたね。どの指を使って測ったの?。」(楽しい計測)
6.声かけしましょう。「机は、ノートに比べると、とても大きいね。」「でも、窓やドアは、もっと大きいね。」「お庭や校庭は歩幅で測れたね。」「歩幅は、普段歩いているときの一歩ですよ。」(身体尺を使用した計測の学び)
Ⅲ.まとめ:振り返りと評価
振り返りをしましょう。身体尺で測った机やノートの大きさをかいた用紙を見ながら、お子様のとりくみをほめましょう。今日使った身体尺だけでなく、体の一部を使った測る方法は他にないかを考えさせましょう。そのうえで身体尺で測る楽しさや、役立ちで分かったことや感じたことを話し合いましょう。身の回りの事物は、使う人の大きさに合わせて作られていることも学びの一つです。お子様からお話を聞き、肯定的な言葉をかけたり、努力を認める言葉を投げかけたりしましょう。(お子様にわかる評価)5~10分
Ⅳ.片付けと掃除
片付けをお子様と共に行いましょう。
使用した道具や用具を元に戻します。(片付けと掃除)5分
鈴木佐知子
1993年、横浜国立大学大学院教育学部美術教育学科修士課程修了
1999年、東京学芸大学大学院連合学校教育学部芸術学科博士課程修了
神奈川県展協会賞、和歌山洋画100大賞展入賞、アメリカ大賞展(ブロンクス美術館)入賞など
2011年セーラムギャラリー(NY)、2014年ギャラリーサテリット(Paris)作品発表
日本デザイン学会会員、大学美術教育学会会員、日本美術教育連合会員、INSEA(国際美術教育連合)会員、モダンアート協会会員、ヨコハマSASユニバーサル研究室代表
障害について
2005年千葉大学名誉教授を主治医として手術を受ける。網膜の疾患から視力低下後視覚障がいが進み、現在第1種第1級の身体障がい
2006年以降も周囲の人々の協力を得てデザイナー、教育者及び造形作家の活動を継続
連絡先
Email: sachiko@sachiko-museum.jp
HP: http://www.ys-udl.com/